女子DEATHヒーロー
「鈴木拓登・燿都って……あの鈴木兄弟の鈴木じゃね?」
 斜め前のヤンキーの下っ端って感じの人が言った。

 お兄ちゃん達ったら有名人〜。
 ……ここら辺のヤンキーだったら名前ぐらいは知ってるはず。

 チームを組む訳ではなく少人数で行動し、売られた喧嘩はどんなに相手が多くても買う。
 それは気分が乗ればだけど。気分が乗らなかったら……無視か、1人に押しつける。
 それを繰り返し、いつしか鈴木兄弟と愉快な仲間たちは有名になっていった。

 鈴木兄弟のせいでどれだけあたしが奮闘したか……!押しつけられまくったんだから。

 あたしがため息をつくと、隣の央太があたしの肩を叩いた。
「あれって……」
「……あたし何も聞いてないんだけど」

 央太はあの兄たちの気まぐれの被害者でもある。元々どこかのチームに入ってたけど、お兄ちゃんたちが面白がって引き抜いた。まぁ、お兄ちゃんたちはチーム作ってないから……自称作ってないから微妙だけど。

 あ、ちなみに央太もあたしと一緒で押しつけられ仲間なんだけど。

「央太は何か聞いてなかったの?」
「そう言えば……この前拓登さんから電話があったな……」
 初耳だ。
「その頭の悪さも役にたつんだな。って」

 聞いてないぞー?コノヤロウ☆
 何で言わなかったのかやや強引に詰め寄ろうとしたけどやめた。
 央太が頭が悪いってことを2人は知ってるのか。見るからにバカそうな顔をしてるけど。
 なんか央太が可愛そうになった。


「どうするんだよ」
「……あたしが妹だって知られたくない」
 出来れば関わりたくないけど……あたしが頼んでも兄たちは聞いてくれない。
 キョウダイって言わないことすらダメかも……。

「とりあえず、あとから二人に話す」
「ま、頑張れよ」
「……あんたも行く?」

 道連れにしてもいいかも。標的が二人になれば何かが軽くなる気がする。
「や、遠慮しとく!俺、先に寮行くわ」
「寮行ってからでいいから」
「寮行ったら荷物片付けるし!」
 ……何このヘタレは。喧嘩強いくせに!

 いいよ、あたし一人で行くから!
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