女子DEATHヒーロー
 こわいです、拓兄。なんか……ニヤリと笑っていらっしゃいます。
 少ない女の子たちがキャーキャー言ってるのはおかしい!

「そうか。……そういえば、さっきケータイ落としてたぞ」

 え!ウソ!?
 ポケットを確認したら、無かった。このポケット落ちやすくてダメだ。二回目じゃん!
 っていうか、おかしくない?

「あ、すみません。ありがとうございます」
 あたしは頭を下げると立ち上がって取りに行った。
 近付きたく無かったのに。

「ありがとうございま……す」
 拓兄の手からケータイを取ろうとしたら、上にあげられた。
 拓兄とあたしの身長差は結構あるから……届くはずないじゃん!
 ちょっと跳んでみても届かない。女の子らしく軽く跳んでみた。
 いつもの全力ジャンプじゃなくて。あたしの全力ジャンプなら軽く届く。
 まぁ、そんな事したら拓兄にはたき落とされそうだけど。

 拓兄を軽くにらむと、拓兄は鼻で笑った。
 ……やられた。狙いはこれだったってわけか!
 あのセクハラはケータイを盗るためで、今のこのやりとりは……何なんだろ?
 いつもの意地悪クラス公開バージョン?

 って!あたしは隅っこで平穏に生きる予定だった。
 数少ない女子の視線が突き刺さる……30人中あたしをあわせて7人の女子の中の多分3人くらいの視線が痛い。
 気のせいだろうけど。気のせいじゃないと困る。

「……よく見たらあたしのじゃないです」
 あたしのだけど!でも、今は戻りたい……。後から返してもらうからいいや。
 さよなら、あたしのケータイ。
 いつか必ず魔王の手から取り戻してみせるからね!
「そうか。……佐伯、キャッチしろよ!」
 拓兄はキョトンとした顔の央太に向かってあたしのケータイを投げた。全力で投げた。

 マイケータイ!落ちたら死ぬ!ケータイが死ぬ!
 誰かキャッチして!あたしじゃ間に合わない!
 ていうか、央太絶対キャッチしてよ!
 あたしが祈っていると、央太がケータイを見事キャッチした。

 周りから拍手を貰ってる。

 やる時はやる奴だって信じてたよ、あたし。
 手が痛いのは分かってる。

 妹のケータイを本気で投げるって何よ!
 妹だからかもしれないけどさ……。
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