女子DEATHヒーロー
「で、やっぱり葉月哉?」
 だから何が?
 ヤン長も言ってたよね。あたしは来たばっかりだから何にも知りません!

「絢灯、落ち着いて聞けよ……」
 隣に座っていた央太が肩を叩いた。央太は知ってるか。情報通だし。
 あたしは深く考えずに佐々木の話を聞いた。
 話が進むに連れてあたしの眉間に寄るシワたち。話の中盤で早速本気でこの学園に来たことを後悔した。

 話し終わると、佐々木は鼻歌を歌いながら部屋を出てどこかに行ってしまい、残ったあたしと央太は呆然とソファーに座っていた。
 正確には、呆然と座っているあたしの隣で央太がどうしようか悩んでる状態。
 聞かなきゃ良かった。まぁ、いつかは知らなきゃいけないことだけど。

「……この学園腐ってる」
 佐々木の話はこうだ。この学園に入った女子は安全を手に入れるために、それぞれ気に入ったトップの支配下に入る。一部の男子もそうしているらしい。
 今の説明も簡単だけど、更に的確にイヤな現実を言うと、安全を手に入れるためにトップの、トップのね、トップの……。
 トップのあれ!

「何でセフレにならなきゃいけないわけ?」

 意味分かりません、あたし。

「交換条件ってわけか」
「……絶対イヤだわ」
 でも、セフレになっちゃう子の気持ちは分からなくもない。もしならなくて力もなかったら……それより酷いことになるんだと思う。
 獣の巣窟だし。

 それなら、一人に抱かれるのを選ぶだろうなぁ。
 あたしはイヤだ!そのために変装してるんです。
 ちなみに、入学してから2週間以内に決めた方がいいらしい。2週間すぎたら危険なんだって。
 何で2週間?律儀に守るんだ……そういうの。
 まぁ、あたしみたいにセフレにならない人もごく少人数だけど居るらしい。
 どうやって身を守ってるのか教えて欲しい。

「で、お前どっちに」
 央太の空気を読まない発言に、あたしは無言で央太の顔を殴った。もちろん、グーで。

 はっ!しまった!

 わざとらしく吹っ飛んだ央太は、頬を手で触りながら苦笑いした。殴られ慣れてるよ、央太!
 あたしったら……無意識のうちに殴ってた。

「……顔が取り柄なのにごめん、央太」

 顔は良いんだもん。バカだけど。どうしようもなくバカだけど。
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