女子DEATHヒーロー
「てわけだから、今日は那奈と食べる……」
 振り返りながら言うと、後ろに引っ張られた。しまった……油断してた!
 あたしはバランスを崩して後ろから佐々木の方に倒れた。

 何すんの、佐々木!

 まぁ、あれだよね。膝に座っちゃった。しかも、がっちりホールドされた。
「ちょっ……離して」
「えー……ヤダ」

 頬を膨らませて言う佐々木。
 マジで離して!お願いだから!あんたは一応モテるんだから!視線が痛いから!
 何やってんの?って睨まれてるし……。あたしのせいじゃないよ!

 それに、次は現国……魔王が来る前に!

 無情にも始まりのチャイムは鳴り、それから数秒後ーードアが開いた。
 入って来たのは拓兄だ。

「お前らうるせぇ。チャイム鳴ったら……」

 佐々木の腕から逃れようと奮闘するあたしと拓兄の目が合った。
 終わった……。

「鈴木、席に戻れ」
 拓兄はそう言うと、教卓に教科書を置いた。案外あっさりだ。
 ……こわいよね。

 佐々木の頭に頭突きをくらわせると、佐々木の手から逃れて席についた。
 ニヤニヤ笑いの佐々木。腹立つ!

 あたしは席に戻ってから授業が終わるまで、ヒヤヒヤしながら授業を受けた。
 後から気付いたけど、拓兄はあたしがヒヤヒヤしながら授業を受けるのが目的だったんだ……。
 鬼畜だよね。こんな兄の元でよく健やかに清らかに育ったよ……。

 まぁ、ちょっと暴力的に育ったけど。

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