女子DEATHヒーロー
 あの時以来あたしは葉月哉とは会ってない。同室だけど。
 色々忙しいんだと思う。うん、色々ね……あはは。想像したくないわ。
 っていうか、部屋いらないんじゃないかと思う。ちらっと見たけど、物がほとんど何も無かったし。
 どこに住んでるんだろう。

 央太とか佐々木なら知ってるだろうけど、知っても仕方ないか。

 でも、何であんな人と同室になったんだろ。……ヤン長とか生徒会長は一人部屋か、手下と一緒になればいいのにさ!
 あ、そういえば……生徒会長も結構気に入ってるらしい。天然那奈ちゃんは可愛いもんね。
 あたしが男だったらほっとかないもん。
 那奈を上級生が狙ってるのをあたしは知ってる。明らかに見てるもん。
 移動の時とか。あたし、実はあいつらを睨んでる。近付いたら……央太か佐々木をぶっ飛ばして止めてやる。

 ……そんな状況だもん。那奈の傷つく姿はみたくない。

「那奈は……どっちがいいの?」
 那奈にはあたしみたいにどっちにもつかないっていう選択肢は無い。そんなことしたら……学校に居られないどころか、精神崩壊。馬鹿げてる。この学校はおかしい。
 それに適応しちゃう人たちもすごい。……あたしもいつか当たり前になっちゃうんだろうか?

「私は……」
 那奈は迷ってる風に言ったけど、迷ってなんか無いと分かった。決まってるって顔をしてるもん。
 迷ってるとしても、早くした方がいい。あと1週間くらいでタイムリミットの2週間だから。

「那奈は那奈が思う方にふわぁーっと行けばいいよ。その方が那奈らしいから……」

 那奈はふわふわしてるし。考えるの苦手そうだもん。

「絢灯ちゃん……ありがとう!」
 那奈はフォークを持ったままあたしに抱きついた。あ、なんか今あたしの夢に近付いた感じがする。
 なんか……平穏ってこんな感じな気がする。


 あたしの平穏なんてすぐに終わるんだけどさ。
< 42 / 134 >

この作品をシェア

pagetop