女子DEATHヒーロー

 静けさを取り戻した音楽室の隅に眼鏡男子を寝かせ、さっきの不良から奪い取ったブレザーをかけた。
 不良Aのブレザーなんてイヤかもしれないけど、仕方ないじゃん。
 眼鏡男子のブレザーが見あたらないんだもん。

「覚えてろ!!」

 なんてわめきが聞こえたけど、多分無理。一々覚えてらんないもん。
 それにしても……久しぶりに暴れた。人数少なかったし、かなり弱かったから、喧嘩前に今までしてた準備運動よりも軽い運動だった。


 あたしはピアノの前にあるイスに座るとため息をついた。

「頭悪くて良かった……」

 あたしは眼鏡男子を助けに行ったんだから、倒れてる眼鏡男子を人質にしても良かったのに。
 弱いものイジメする割には意外とせこくない人だったのかも。
 ま、人質をとったら弱いって言っちゃってるようなもんだし。
 顔くらい覚えておいてあげようかなぁ。

 あたしはそんなことを考えながら眼鏡男子を見た。まだ起きそうにない。……燿兄を呼んで保健室に連れてってもらおうか。あ、央太でも良いか。
 とりあえず……着替えなきゃ。こんな格好を誰かに見られたら……ヤバい。っていうか、不良たちに見られたし!

「まぁ、あたしって分からないか。制服じゃないし」
 央太に一応連絡してみたから、多分すぐ来る。

『第二音楽室で喧嘩しちゃった☆』
 ってメールしたから。授業中でも走ってくるよ、あれは。

 あたしがロッカーに突っ込んだ制服を取りに行こうと立ち上がると、眼鏡男子が動いた。

 案外早く目が覚めたみたい。
 眼鏡男子は腹を押さえて少し呻き声をあげた。そりゃ痛いよ……さっき確認のために見させて貰ったけど、青あざ出来てたし。


 あたしは眼鏡男子に近付くと、しゃがんだ。

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