女子DEATHヒーロー

鬼ごっこ

 ちょっと放心してから部屋に戻った。食堂に行く気は無いけど……一応着替えなきゃ。
 この時、あたしは気付かなかった。ウィッグを取ったままだってことに。

 あたしが自室に入ったと同時に誰かが入ってきた。央太か佐々木だろうから別に気にしなかったけど。

 食堂に行くつもりはないけど、お腹はすく。何か食べたいけど、部屋には何にもないし……。
「央太がなんか持ってるかも」
 央太だし。……央太だからってこともないけどさ。

 あたしが部屋から出ると、オレンジ頭が目に入った。ああ、さっき入ってきたのは葉月センパイか。

「……」

「……」

 あたしを見る葉月センパイ。……誰?みたいな顔。

 葉月センパイの手には……黒い髪。葉月センパイが毟ったわけじゃない。あれは……あたしの髪!

 待って、待って……落ち着いてあたし。

 ……こうしちゃいられない!
 あたしは黒いパーカーのフードを被ると、入り口まで走った。部屋に入ったって袋の鼠だもん。

「おい!」
 その言葉に止まるはずなく、あたしは走った。やっちゃった……バカ、あたし!
 次はヤン長にバレた!


 こうしてあたしとヤン長の鬼ごっこが始まった。


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