女子DEATHヒーロー
 あたしと央太は少し距離をあけて歩いていた。央太は腹を押さえながら歩いている。
 どこかの誰か様が央太の鳩尾に一発いれたのさ。

 あたしだけどね!

「……鬼」
「……犬」
 ちなみに、鬼は央太で犬はあたしが言った。

 赤茶の髪からして犬だ。ワックスで立ててるけど、元が柔らかいからかはね方がちょんって感じ。
 撫でてあげたらどうなるかな?

 あたしが央太の頭を狙っていると、危険を察知したのかちょっと離れた。
 残念。

 さっきメールが来た気がしてあたしはケータイを探してポケットに手を入れた。
「あ。ケータイ落とした」
 いつもの定位置のポケットにケータイが入ってない。さっき央太に一発入れた時に落としたかも。
 行くの……面倒だなぁ。そう思いながら央太を見ると、一回目が合ってからすぐにそらした。
 あ、そっかぁ。央太に任せればいいんだ。

「央太君、よろしく」

 あたしが拳を作って言うと、央太は渋々戻っていった。
 これぐらい当然だ。あたしをこの学園に来るための餌食にしたんだから。

 にしても……央太は強いのに。あたしを含めて鈴木家の住人には頭が上がらないらしい。
 他の人に対する央太の接し方はこんなんじゃない。時には上から目線、一匹狼、情報を得るために親しくしたり脅したり。
 どの央太が本当の央太かなんて知らない。

 央太が戻って来るまで待っていようと、ベンチに座った。

 石畳の道の両脇は木がたくさん生えていて森になっている。
 等間隔に桜が植えられているけど、地面にはそんなに花びらは落ちていない。掃除が行き届いてるってことかな。

 自然がいっぱいだ。
 あたしは結構自然が好き。田舎のおばあちゃん家に今すぐ行きたいくらい。……色んな意味で行きたい。

 鳥のさえずりも聞こえてきて何だか落ち着く。
 心が洗われるってこの事かなぁ……。とか思いながらぼーっとしてると、鳥のさえずりに混じって違う音が聞こえてきた。
 一年前までは一週間に五回は聞いてた効果音と声。うめき声と殴る音。

 ……え、けんか?
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