女子DEATHヒーロー
 音のした方をベンチの背に隠れながらソーッと覗くと、オレンジ色の髪の人が見えた。
 顔は……ほとんど見えないけど、それは愉快そうに口の端をあげているのは分かった。

 ……遠くても感じる威圧感。あれは危険だ。あたしの本能がそう告げる。

 視線を下に移すと……地面とランデブー中の十数人の男たち。どの人も制服を着ている。
 オレンジは喧嘩を楽しんでる。喧嘩というより、人を虐げるのを。

 おっそろしい人!

 オレンジは倒れてる男の1人を蹴ると、こっちに歩いてきた。
 ……その蹴りは必要ないと思う。あたしがまだ見ていると、オレンジは立ち止まった。

 バ、バレた?

 あたしは座り直すと、空気になった。なろうとした。超空気。
 厄介事は勘弁!
 ちょっとでも関わるのは嫌だ……。

 あたしがひたすら下を向いていると、オレンジは止まることなく通り過ぎていった。
 一回もこっちを見ていない……と思う。
 もしかして……本当に空気になれた?

 特技が一つ増えたと内心喜んでるあたしは、オレンジの去る方を全く見てなかった。
 見てなくて良かったんだと思う。

 オレンジが少し離れた所で立ち止まってあたしを見ていたなんて……知らなくていいことだ。
< 9 / 134 >

この作品をシェア

pagetop