この手を離さない
「あのさ…」


「無理を承知で貴方に言ってるのは理解してます。それに、出会ったばかりでこんな事を頼むのも失礼だとわかってます。」


「なら、俺の答えはわかってるだろ?無理だ。」


「本当にお願いします。」


「俺のマンション、ペット禁止なんだよ。それに今日会ったばかりの君にお願いされても…」


今こうして誰かといる事だって嫌なのに、


これ以上関わるなんてもっと嫌だ。


猫なんて面倒みれない。


「私の家でも何度も頼みましたがダメでした。隠れて部屋で飼ってたのですが、見つかって…」


「それでこんな時間にあそこに居たわけ?」


コクン…。彼女が頷く。


「で、猫が飛び出したから助けるために君が出てきた。そうだろ?」


コクン、コクン。大きく頷かれ、


小さく啜り泣く声が聞こえてきた。


「この子を捨てるなんて、私には出来ません…」


おいおい、泣くなよ…


「私の唯一の友達なんです…」


必死に涙を堪える彼女に何をしていいか困る俺。
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