この手を離さない
狭い車の中、鼻を啜る音がはっきりと耳に入ってくる。


暫く会話もないままお互い下を向いていた。


俺も彼女に強く言えればいいけれど、


何故か何も言えない。



時々、酔っ払いのオヤジや飲み屋の姉ちゃんが車の横を通った。


その度、チラッと俺達の方を見ている視線が感じる。


完璧に俺が悪者に思われてるんだろうな…


あーっ、俺どうしたら良いんだよー!


女の扱いは慣れてて、


どんな状況でも対応できる俺なのに…


なんだろう?


心の中がモヤモヤする。


本当、


困ったな……


「飼えないなら拾ってくるなよ。今更無責任だろ?」


「はい…」


反省交じりの彼女の返事が心に響いた。
< 11 / 75 >

この作品をシェア

pagetop