この手を離さない
「あの、可愛がってください。」


微かに目に涙を溜めてる彼女が言う。


「引き取った以上、責任持って育てるから安心しろ。」


「はい…」


「あと、今日は本当にすみませんでした。急に飛び出してしまって…」


「もうあんな事するなよ。おかげでこっちは寿命が縮まった。」


「でも、こうしてこの子猫を引き取ってくれる人と出会えて良かったです。」

「本当に、ありがとうございます」


「十分お礼は聞いたから、行きなさい。」


「はい。じゃね、いい子でね。」


最後にもう一度子猫の頭と身体を優しく撫で、車から降りた。


子猫を助手席に置き、車を発進する。


ありがとうと言ってるかのように手を振る彼女を、バックミラーからしばらく見た。




彼女との出会いはこれで最後だと思ってたが、


この出会いが運命だったと気付いたのは、


もう少し後の話―――――。
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