この手を離さない
いつもと同じ通りを車で走り、


必ずどこかの信号で赤になり止まる。


信号待ちをする度、


ぼんやりと考え込む。


あの日の彼女を思い出す。


何気に歩道に目が行く。


そこに一人の人が立っいた。


あの日もこんな夜中に一人でいたんだよな―――。


大事な子猫を捨てる為に一人で……。


………ん?


………んんっ?!


ずっと彼女のことを考えてたからか?


歩道にいる子が、俺にはあの日の彼女に見える。


そんな偶然なんて無いよな?


見間違いだろう


そう自分に言い聞かせた。


偶然とか運命とか信じない俺は、


何も思わないまま家へ帰った。
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