この手を離さない
「どうぞ。」


「……」


とりあえず俺のマンションに連れて来たけど、


彼女は玄関で戸惑ってた。


「どうした?上がりなよ。」


「本当に良いんですか?こんな時間に私がいたら貴方の彼女さんとかに迷惑を…」


「は?何勘違いしてるか分からないけど俺には彼女いないから、遠慮することないけど?」


今思えばこんな時間に


女の子を家に連れて来るのは


不謹慎かも。


でも今日は特別ってことにしよ。


こんな子供にどうこうするほど、


俺は馬鹿じゃない。



おじゃまします、と小さく言い彼女が上がり込む。


リビングの扉を開けたと同時に


猫が俺の元へやって来た。


「ほれ、抱いてやりな」


彼女に猫を渡してあげた。



最初は何も言わなかったが、


気持ちが解れたせいかな


安心したような声で


「会いたかったよ…」


と、猫に顔を埋め抱いていた。
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