この手を離さない
「はいこれ。」


俺は彼女にメモを渡した。


なぜか彼女は不思議な顔をした。


「これはなんですか?」


「えっ、俺の家電の番号と携帯の番号。あとここの住所だけど?」


「あぁ、そうか。」


「君、携帯の番号は?」


「私は携帯はありません。」


「そうなの?どうして?今時の若い娘なら携帯は必要だろ?」


「友達…いないので必要ないです。」


「ふーん…」


なんか、訳ありっぽいなぁ…。


この時の俺はさほど気にも留めなかった。


「そう言えば、この猫の名前は何ですか?」


子猫を抱き上げ彼女が聞く。


「あー、そう言えばまだ決めてなかった。」


「って言うか、俺達お互いの名前も知らないよな?」


「あっそう言われればそうですね。」


お互いを見合って軽く笑った。
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