この手を離さない
「いらっしゃいませ〜」


毎日通ってるコンビニ。
すっかりここの常連になってしまった。



帽子と眼鏡をかけてる俺に、誰も気付いてはくれない。


時が経つと人の記憶から簡単に消えてしまうんだなとよく分かった。


たまに本の立ち読みして世の中の情報を知る。


休止して間もない頃は、どの週刊誌にも俺達のバンドのことばかり書いてあって、


それだけ世間を驚かせる出来事だったらしい。


ありもしないことを好き勝手に書かれ、その年の重大ニュースのトップ3に入ってたことは自分でも笑える話しだったなと覚えてる。


いつもの牛乳を持ちレジへ。


ピッとバーコードを読み取る音の後に、店内から聞き覚えのある曲が流れた。


「あっ…」


思わず小さな声が出る。


この曲、


俺達のバンドの曲。


イントロのギターの音だけですぐ気付いた。


心が一気に暖かくなった。



正直、自分の曲が流れると嬉しいもんだ。












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