この手を離さない
「恭介、元気そうだな。安心した。」



「まぁ、適当に生活してる。誠一も元気そうだな。」



ぎこちない会話に誠一は軽く笑ったような顔をした。



「俺はそんなに元気じゃない。わかるだろ?恭。」


俺は言葉を返すことができなかった。



元気そうだなと誠一に言った事は上辺の言葉。



本当は誠一に元気がないことは気付いてた。



元気がないと言うか、気力がない感じ。



なぜそうなったかは俺が一番良くわかる。



そして、誠一がまた前のように戻れる方法も、



俺にはわかってる。



「なぁ…、恭介」



コーヒーカップをテーブルに置く音が心の中を微かに波打ちたてた。



「なぁ、もう一度戻らないか?あの頃に…」



やっぱり、話しはバンドの事だったか…。
< 46 / 75 >

この作品をシェア

pagetop