この手を離さない
言葉が喉の所まで来てるのに出てこない。



そんな俺を見抜いてなのか、誠一はゆっくり話しを続けた。



「あの時の俺達、無我夢中になって音楽を造ってたよな。そして恭がさ、しばらくバンドを休止したいって言ってさ。正直、俺も音楽から離れたい時期だったんだ。だから休止して正解だったと思う。」




俺は黙って誠一の話しに耳を傾けた。



「デビューしてから何も出来なかった分、しばらくは自由に時間を使ってたよ。音楽のことは一切考えなかった。」




「でもさ……」



ギターを持った誠一の顔は寂しく見える。



それでも俺は誠一にかけてやる言葉が見つからない。



「音楽のない生活はつまらなかった。一人が寂しかったよ…。」



「誠一……」



「この前二人にも連絡したんだ。聡一郎も司も俺と同じだった。」
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