この手を離さない
見つめ合ってた俺達の横を何人かの人が通って行く。


そのたび、視線が俺に向かってた。



それもそうか。



家の前で黙ったままの男女がいるんだもんな。



片方は女子高生、



もう片方はオッサンだし。



声をかけたいけれど、上手く話すことの出来ない俺は、



言葉より先に



真白の手を取っていた。





「高崎さん…?」



キョトンとした顔で俺を見るなよ。



今、すっごく俺の顔は赤くなってるだろうな。




「今、時間あるか?」



「はい、大丈夫ですけど…」



「そっか。と、とにかく車に乗らないか?」



「はい。」



黙って俺に手を握られたままついて来る彼女に愛おしさが込み上げてくる。



握られた手だけ、2月の寒さを感じさせることはなかった。
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