この手を離さない
真白に言われるまま駐車場に車を止めた。



「ここから少し歩きます。」



「え?」



さっぱり理解できないまま車から降りた。



「早く!間に合わなくなります!」



「え、ちょ…っ、真白?!」



少し強引に手を引かれ、走り出す。



冷たい空気が頬に突き刺さる。



それでも真白は走るのを止めなかった。



俺も、真白に合わせるように走った。



―――――




「着きました……。ここです。」



着いた場所は街中の歩道橋の上。



乱れた息を整いながら俺はゆっくりと顔を上げた。



「…………」




言葉が無かったし、見つからない。




目の前の風景は、本当に俺達の住んでる街だろうか?




目を疑ってしまいそうだ。
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