この手を離さない
少しだけ気まずい沈黙が二人に訪れた。



「あの…、じゃ私はそろそろ…」



沈黙に耐えかねてか、気まずいまま真白は帰ろうとした。



「あっ、ちょっと待って!」



まだ帰ってほしくなかった俺は、言葉よりも先に真白の手を握っていた。



「高崎…さん?」



あまりにもいきなりの行動に、真白の表情は驚きを隠せない。



「ご、ごめん!実は、今日来たのは偶然じゃないんだ。真白にこれを渡したくて……」



そう言って後部席から紙袋を取り、そのまま真白に渡した。
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