この手を離さない
左に止められたままの車はどこも異常はなく動き出した。


助手席に彼女を乗せ、彼女から聞き出した住所に向かう。


今日は散々な日だなとグッタリした気持ちのまま運転する。


言われた場所に着き、最後に一言言ってやった。


「もう急に飛び出すことするなよ。あと、こんな時間に女の子が一人でいるな。」


「はい…」


「じゃあな。ちゃんと送り届けたぞ?」


「……」


彼女は下を向いたまま 車から降りようしない。


「おい、ここ君の家なんだろ?」


「はい、そうです」


「じゃ早く帰ったら?家族が心配してるんじゃない?」


それでも彼女は下を向いたまま動こうとしない。


「おい…」


やっぱりどこか打ったのかもしれない。
なかなか動かないことに心配になり彼女の肩に触れようとした…


「あ、あのっっ!!」


「は、はいっ!!」


意を決した表情の彼女に慌てて手を引っ込めた。
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