この手を離さない
真っ直ぐな瞳で見つめられ、俺はどうしていいか分からない気持ちになった。


年甲斐もなくドキドキしてる…


沈黙の後、彼女はコートの中から何かを出す様子を見せた。


『ミャーッ』


えっ……、猫…?


そう、


彼女のコートの中から出てきたのは黒い子猫。


まだ生まれて数ヶ月くらいのとても小さい子猫。


…で、


この猫が俺に何の用?


「あの…」


「えっ、はい。」


沈黙を破った彼女が話しかけてきた。


俺の返事もぎこちないし…。


「貴方にお願いがあります」


「はぁ…」


なんだか嫌な雰囲気。


「この子猫、飼ってくれませんか?」


“やっぱりかぁー!”


目の前に差し出された猫も俺にすかるように“ミャー”と鳴いた。
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