君に染まる(前編)
女の嫉妬
「何、これ…」
あたしよりも先に口を開いた楓ちゃん。
あたしと楓ちゃんの視線の先には、
泥だらけ、びしょ濡れのあたしの上靴。
学校について履き替えようと思ったら
このありさまだった。
「何…いじめ!?」
…いじめ…あたしが?
ショックで言葉を失っていると、
誰かがあたしの肩に手を回した。
「よぉ」
「獅堂先輩…」
「どうした?なんか元気ねぇ…――」
あたしの顔を覗き込んでいた先輩は
上靴を見て言葉をつまらせた。
「なんだよ、これ」
「ひどいですよね!?誰がこんなこと!」
獅堂先輩に向かって
怒りをあらわにする楓ちゃん。
「誰が…?」
そう呟いた先輩は一瞬黙ると、
「ほら」
財布から一万円を出して渡してきた。
「なんですか!?」