君に染まる(前編)
「いい?これ以上獅堂くんには近…」
「何してんの?」
あたしを見下ろしていた先輩達が
その声に振り返った。
「せ、芹澤くん!?」
驚き慌てる先輩達を通り過ぎ、
芹澤先輩はあたしの側にしゃがみこんだ。
「大丈夫?痛そう」
あたしの手に触れた。
「…大丈夫、です」
思わず手を引っ込めると、
固まってる先輩達に視線をうつした
芹澤先輩。
「…まだいたの?」
「え…」
「早く消えろよ」
どこから出てるのか分からないほどの
冷たい声の芹澤先輩に、
先輩達の顔が青ざめていく。
そのままなにも言わずに走っていった。
「どうしたの?口開いてるよ」
あたしに視線を戻した先輩にそう言われ、
固まっていたあたしは思わずうつむいた。
だって…。
「俺がこんなこと言うと思わなかった?」