君に染まる(前編)
「創吾ってちゃんとした
“彼女”って作ったこと無いの。
いつも体だけの関係で」
体だけの関係…そういう意味…だよね?
「それもだいたいケバい女。
そういうの相手にしてた創吾だから
未央ちゃんみたいな子が新鮮なんだろね」
足の包帯を巻き終えた先輩は
そう言って笑った。
いじめは日に日にひどくなった。
上靴は隠される、
ロッカーの物は無くなる。
小さないじめが積み重なり、
いじめが始まって1週間の今日。
朝の騒がしい教室は
あたしが入ってきた瞬間
一瞬にして静かになった。
クラスの視線があたしに注目する。
…何?
視線から逃げるように
自分の席に向かったあたしは、
机を見て頭が真っ白になった。
刃物で刻まれた「キエロ」の文字。
何かで殴られたのか
机の足はぼこぼこになってる。
「……あったまきた…行こう未央!」」
呆然と机を見下ろしていたあたしの腕を
楓ちゃんが荒々しく掴む。