君に染まる(前編)
「行くって…どこに?」
「Ⅲ類に決まってんでしょ!?
獅堂先輩のファンに一言言ってやる!!」
「いいって…」
「よくない!!」
「いいから…」
「じゃあこのままでいいの!?」
静かな教室に楓ちゃんの声が響く。
「おい、なんの騒ぎだ?」
野次馬のように教室を覗く生徒の間から
担任の先生が教室の中に入ってきた。
こっちへ近づいてくると
机とあたしを交互に見て、
「…落ち着け岬」
楓ちゃんの肩を軽く叩いた。
「百瀬は新しい机をとってきなさい。
校舎裏の倉庫にあるから」
「…はい」
あたしは荷物をその場に置き、
走って教室から出た。
“キエロ”
机に刻まれた文字が頭から離れない。
溢れそうになった涙をこらえ、
校舎裏の倉庫を開けた。