君に染まる(前編)
中から新しい机を取り出し
校舎へ入ろうとしたその時。
バッシャーンッ!!
突然水が降ってきたと同時に、
「あれ?誰かいたのぉ?ごめんね~?」
笑い声と共に廊下を走っていく音。
…これ…ただの水じゃない…
雑巾の匂いがする…。
あたしは机をその場に置いて
崩れるようにしゃがみ込んだ。
「………っ」
もうやだ…もうやだよっ…。
なんであたしがこんな目に…。
「みゃあ」
声を抑えながらスカートを握りしめた時、
どこからか猫の声が聞こえてきた。
少し顔をあげると、目の前に子猫がいた。
「…くさっ」
子猫を見つめていたあたしの耳に
聞こえてきた声。
声のする方を見ると、
鼻をつまんでいる芹澤先輩がいた。
「何これ…雑巾の匂いじゃん」
しぶい顔をしながらも
あたしに近づいてくる先輩は、
あたしの側にしゃがみこんだ。