君に染まる(前編)
「また、創吾のファン?」
猫を抱えながらそう聞いてくる先輩に、
あたしはなにも答えない。
「とりあえず着替えた方がいいよ」
あたしの顔を覗き込みながら
優しくそう言う。
そんな先輩と目を合わせられず、
あたしはただ涙を流すだけ。
「…なんでですか?」
「え?」
「なんで…
獅堂先輩のせいでこんな目に…」
好きでもない人に振り回されて…
好きでもない人につきまとわれて…。
迷惑してるのはあたしなのに。
つきまとわれてるのはあたしなのに。
なんであたしが
こんな目に合わなくちゃいけないの…?
なんで…
こんなに苦しまなくちゃいけないの?