君に染まる(前編)


誰もいない…。



落ち着くまでここにいていいよ、
って言われたけど…居づらいな…。



でも、教室には戻りづらいし…
どうしよう…。



髪を拭きながら
きょろきょろとしていたあたしは、
螺旋階段下の部屋にピアノを見つけた。



高級そうな黒いグランドピアノ。



学校の…
しかも個人的に作った部屋に
グランドピアノ?



思わずため息がでる。



でも…弾いてみたいな…
こんないいピアノ滅多に触れないし…。



ちょっとぐらいなら…いいよね?



ピアノカバーをめくり、
鍵盤のふたをゆっくり開けた。



人差し指でドの音を弾いてみる。



ポーン…



「キレイな音…」



やっぱり高いピアノだと
こんなに音が違うもんなんだな…。



イスに座って鍵盤に手を置く。



~♪



キレイな音色が部屋中に響いた。



落ち着く…。


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