君に染まる(前編)


ピアノを弾いてる時は
どんな嫌なことでも忘れられる…。










パチパチパチ



夢中でピアノを弾いていたあたしは
急に聞こえてきた拍手に手を止めた。



「上手いんだな、ピアノ」



振り返った先には
ドアにもたれる獅堂先輩がいた。



「続けろ」



「え?」



「聞いてやる」



ピアノにほおづえをつき、
笑顔であたしを見下ろす。



「どうした?弾けよ」



「…弾きません」



「あ?」



「あたし、教室に戻ります…」



「待て」



立ち上がろうとした瞬間、
腕を引っ張られ強引にイスに座らされた。



「何イライラしてんだ?」



あたしをピアノに押しつけ
顔を覗きこんでくる。


< 131 / 337 >

この作品をシェア

pagetop