君に染まる(前編)
「別にイライラなんか…」
「嘘つけ」
「嘘じゃないです…」
…嘘………本当はしてる。
今は先輩の顔を見たくない。
先輩の顔を見ると
今までのいじめがよみがえってくる…。
“キエロ”
あの文字も離れない…。
「未央?」
うつむいていたあたしの顔を上に向かせ、
心配そうに見つめてくる。
そんな先輩から視線を外すと、
顔を近づけてきた。
当然、顔をそらすあたし…。
小さなため息をついた先輩は
まだ濡れているあたしの髪に触れた。
「シャワー浴びてたのお前だったのか…」
小さくそう呟くと、
ドンッ!!!
ピアノに勢いよく手をついた。
「なんで優のジャージ着てんだよ」
「…え」