君に染まる(前編)
あたしにカッターを向けた先輩は
他の先輩に質問攻めに合う中、
震える手からカッターを地面に落とした。
カシャンとカッターの落ちる音が
裏庭に響いた直後、
「何してんだよ」
聞こえてきた声。
その場にいる全員が声のする方を向いた。
「し…獅堂くん…」
先輩達が震える声でつぶやく。
どうして…獅堂先輩が…?
ゆっくりとこっちへ歩いてくる獅堂先輩。
先輩達、落ちたカッター、あたし。
それぞれに視線をうつしながら
カッターを拾った。
「金持ちのお嬢さまがカッター遊び?」
笑いながらカッターを見つめると、
「なめたマネしてんじゃねぇ!!!!!」
勢いよく先輩達に投げつけた。
固まる先輩達。
そんな先輩達に
獅堂先輩が拳を振り上げる。
だめ…。
「だめぇ!!!!」