君に染まる(前編)
あたしの声に獅堂先輩の動きがとまる。
「…だめ………です…」
そう言うあたしを見つめ、
呆れたような驚いたような声で口を開く。
「お前…
自分が何言ってるか分かってんのか?」
「分かって…ます…」
「分かってねぇ!!!
こいつらになにされたか…」
「分かってます…
でも…殴っちゃだめ…なんです…」
どんな理由があっても…
獅堂先輩はこの人達を殴っちゃだめ。
だって、この人達は…
ただ獅堂先輩が好きなだけだから…。
「だめなんです…絶対…」
じーんと痛む胸元を押さえたまま
そう言い続ける。
「…ちっ」
小さく舌打ちをすると、
獅堂先輩はゆっくり拳を下ろした。
「…いいか、よく聞け。
ついでに他の奴等にも伝えろ」
あたしから先輩達に視線をうつし、
「これ以上未央に関わるようだったら…
たとえ未央がとめようと
俺は絶対に許さない」
静かに…だけど、
すごく低い声でそう言った。