君に染まる(前編)


獅堂先輩の言葉に
小さくうなずいた先輩達は
泣きながら走っていった。










「大丈夫か?」



そう言いながら
あたしの前にしゃがんだ先輩は、
胸元を押さえるあたしの手をどかし、



「よかった…たいした傷じゃねぇな…」



ほっとした表情を浮かべた。



左鎖骨部分から右胸に向かって
約10センチの傷。



「長さはあるけど、
あんまり深くねぇから大丈夫だろ」



そう言うと、
黙ってうなずくあたしを引き寄せた。



「あのっ…」



「悪かった…怖い思いさせて…
こんなケガまでさせちまって…」



抱きしめたままあたしの頭をなでる。



優しい手…優しい声…。



なんだろう…すごく、落ち着く…。



次第に手の震えがおさまってきた頃、
先輩が胸元の傷にそっと触れた。



「これくらいなら
跡にはならねぇと思うけど、
女の胸にこんな傷…」


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