君に染まる(前編)
よく分かんねぇ感情にイライラする。
「どうかしました?」
固まる俺に未央は首をかしげた。
「…未央」
「はい?」
「早く…俺の女になれ」
言いたかった言葉は言えず、
結局出てきた言葉はこれ。
どうせこんなこと言っても、
どんな反応するかなんて分かってる。
ほら…やっぱり苦笑い。
いつもと同じ苦笑い。
もういーよ…
今の俺には言えそうにないし。
そもそも
“好き”って感情が分かんねぇのに
口にしてもな…意味ねぇよ…。
そんなことを考えてるうちに
ゴミ捨て場に着いた。
ゴミ捨て場なんて来たことない俺は、
未央に指示された場所にゴミ袋を置く。
「手伝ってくれて
ありがとうございました。
それじゃあ…」
「ちょっと待て」
俺に背を向け帰ろうとする未央の腕を
掴んだ。