君に染まる(前編)
「お礼は?」
「え?えっと…ありがとうござ…」
「そうじゃなくて…」
腕を引っ張って引き寄せ、
未央の首に腕を回す。
「お礼のキス」
にっこり笑ってそう言うと、
顔を真っ赤にしてうつむいた。
「ほら、早く」
「い、嫌ですっ」
「早くしないと誰か来ちまうぞ?」
「……っ…出来ません…」
「仕方ねぇな……じゃあ俺がする」
そう言って、
驚いて顔を上げた未央に唇を重ねた。
俺の胸をおす力なんて気にしない。
…ってか、俺ってなんなの?
『俺の女になれ』だの、
強引にキスしたりだの…。
そういうことが言えたり出来たりすんのに
“好きだ”の一言が言えないなんて…。
まじでなに?…変人?
「…んっ」
息の仕方が分からないのか、
苦しそうにもがく未央を前に
冷静にそんなことを考えていると、