君に染まる(前編)


「!?…けほっこほっ!」



突然未央が咳きこんだ。



「なんだよ、風邪か?」



口を押さえたまま首をふる。



「先輩…なにか苦い物でも食べました?」



「苦い物?」



「その…先輩と、キス…したら…
口の中がすごく苦くなって…」



「苦い物…ああ、タバコかもな」



顔をしかめる未央にさらっと言った。



「…タバコ?」



「ああ、さっきまで吸ってたから」



そう言って再び顔を近づけると、



「やー!」



ものすごい勢いで避けられた。



「てめぇ…」



「あ、あたしタバコ苦手なんです!」



「んなの知るか、慣れろ!」



「無理です!!」



あまりの嫌がりように腹が立ち、
腕の力を強めた。


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