君に染まる(前編)


部屋に戻った俺に
卓と話していた美紅が声をかける。



「これ返す!
いくら仲良いっつっても
あんたと間接キスなんて絶対やだし!!」



そう言った美紅は、
灰皿の上にタバコを浮かせ、
火のついた状態を保っていた。



俺はそのタバコを奪い、
勢いよく灰皿に押しつぶす。



「あれ?吸わないの?」



「吸わない」



そう言って、
冷蔵庫に向かい缶ビールを取り出した。



「タバコは、やめる」



「え、やめるの!?」



「やめる。これやるよ」



缶ビールを口にしながら、
ズボンのポッケに入っていた
まだ中身の残ってるタバコの箱を
美紅の前にある机の上にぽんっと出した。



「創吾くん、どうかしたの?」



ソファーに座った俺の横に
同じように座ってきた卓が
きょとんとした表情を向ける。



そんな卓に
俺より早く口を開いたのは優だった。



「未央…」



「ぶっ!」



猫を2~3匹引き連れて
螺旋階段を降りてくる優の言葉に、
思わずビールを吹き出しそうになった。


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