君に染まる(前編)
「なんだ、未央か」
優先輩だった。
「危ないよ?階段でぶつかってきたら」
「すみません、考え事してて…
大丈夫ですか?」
「大丈夫。
ってか、なにしてんの?こんな時間に」
「あ、ジュースを買いに…」
階段から見える自動販売機を指さした。
「ふーん?偶然だね。
俺も飲み物買おうと思ってたんだ」
「Ⅲ類の人でも自販とか使うんですか?」
驚いて思わずそう聞くと、
「未央はⅢ類の生徒を
神様かなにかとでも思ってるの?」
くすくすと笑い出した先輩。
「そりゃ、Ⅲ類は金持ちの集まりだし、
変にプライド高い奴は多いけど、
みんながみんな
そういう奴ってわけじゃないよ。
俺みたいに
Ⅰ類寄りの人間だっているし」
「あ…そうですよね」
階段を下りて
自販機に向かう先輩についていく。
「っていうか…
未央でも授業さぼったりするんだね?」
先輩が小銭を入れた自販の隣の自販に、
同じように小銭を入れながら
首をかしげた。