君に染まる(前編)


「え?」



いきなりそう聞かれ、
自販の横にあるベンチに座る先輩に
首をかしげる。



「さっきから気にしてるから。
口の中でも切った?」



「あ…いや、その…口の中が苦くて…」



小さくそう答えると、
先輩は少し顔をしかめた。



けど、次の瞬間には立ち上がり、
あたしの前に立つと、
顔をあたしの耳元に近づけて
囁くような体勢で固まった。



「せ、先輩!?」



一気に顔半分に緊張が集まり
固まってしまったあたしは、
今にも触れそうな
先輩の胸元辺りに向かって問いかける。



「もしかして…さっき創吾とキスした?」



「え!?」



あまりのあたしの声の大きさに
くすっと笑うと、



「やっぱり」



そう言ってまたベンチに座った。



「なんで知ってるんですか!?
…み、見てたんですか?」



「見るわけないじゃん。
俺そんな趣味無いよ」



「じゃあどうして…」



「いろいろあったんだよ、さっき」


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