君に染まる(前編)
「お前に嫌われたくねぇってこと」
口元をゆるめて小さく笑うと、
あたしの腕を引っ張った。
ソファーに座る先輩の上に
またがるように座らされたあたし。
恥ずかしいっ…。
慌てて立ち上がろうとしたけど、
先輩に抱きしめられて身動きがとれない。
「さっきは怒鳴って悪かった」
「…え?」
「電話。
いきなり優が出たから
ついイライラしちまって…怖かったか?」
できるだけ先輩から距離をとろうと
体を反るあたしの顔を覗き込む。
小さく首をふると、
ため息をついた先輩。
「お前には怒鳴ったりすんなって
言われてたんだけどな…守れなかった」
…言われた?誰に?
それに、今まで怒鳴っても
謝ったりしなかったのにどうして…。
…あたしに嫌われたくないから?
お酒もタバコも…あたしの為?
じゃあ、もしかしてこの髪も…。
そう思った時には
無意識に先輩の髪に触れていた。