君に染まる(前編)
「…っ…未央?」
びくっと反応した先輩は
不思議そうな顔をする。
「あ、すいませ…」
慌てて引っ込めようとした手。
けど、先輩にすばやく掴まれ、
「いいよ、触れよ」
先輩の手によって再び髪に触れた。
茶色いサラサラの髪。
「気に入ったか?この色」
遠慮がちに髪に触れるあたしに
先輩は嬉しそうに笑った。
「お前の為に変えたんだからな、
気に入ってもらわねぇと困るぞ?」
あたしの為…。
なんだろう…
“特別”ってだけでドキドキする…。
うるさい心臓の音を感じていると、
先輩がいきなり頬に触れた。
「…っ」
ぴくっ反応するあたしにかまわず
そのままどんどん下がっていく手は
鎖骨辺りでとまった。
「消えそうだな…」
左鎖骨から右胸に向かって
斜めに下がる傷。