君に染まる(前編)
顔をしかめてポケットに手を突っ込むと、
「ちっ…」
取り出した携帯を睨んで小さく舌打ち。
「ほらよ」
「あ…ありがとうございます…」
起き上がり、
先輩が差し出した携帯を受け取った。
楓ちゃんだ…。
「も、もしもし?」
『あ、未央?あんたなにしてんの?』
「え?…あ!」
文化祭の準備!
すっかり忘れてた…。
楓ちゃんの後ろから聞こえる
ザワザワと騒がしい声に余計に焦る。
「ご、ごめんね?楓ちゃん。
すぐ戻るからっ」
『なんかよく分かんないけど…
学級委員長野田1人じゃ大変だから
早く戻って来てよ?』
「うん、じゃあ後でっ」
携帯を切り、
乱れた髪と制服を整えながら
立ち上がった。
「おい」