君に染まる(前編)


立ち上がったあたしの腕を掴み
見上げてくる先輩。



いや…見上げるっていうより…
睨み上げる?



「どこ行くんだよ」



「えっと…
文化祭の準備が残ってるんで
教室に戻り…ます…」



だんだん声の小さくなるあたしから
不機嫌な表情で顔をそらした先輩は、
ゆっくりあたしの腕を離した。



「…じゃあ…失礼します」



小さくお辞儀をして
部屋を出ようとしたその時。



「待て」



あたしの顔の横を通って
開きかけた扉についた手。



思わず振り返った瞬間、
唇に軽いキスが落とされた。



「これで許す」



「許…す?」



「いいから行けよ。準備があるんだろ」



扉を開き、
首をかしげるあたしの背中を押した先輩。



パタンッ



小さな音を立てて閉まった扉。



あたしは扉にもたれて胸を押さえた。


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