君に染まる(前編)
花火
あれから4日。
先輩は、あたしに会いに来なくなった。
「何考えてんだろうね?獅堂先輩」
文化祭を楽しむ人達を
ぼーっと眺めていたあたしに、
楓ちゃんがそう声をかける。
「未央に嫌われたくないからって
いろいろやってたのに、
なんかおかしくない?」
あたしはなにも言わず、
楓ちゃんに差し出された紙コップを
受け取った。
本当に…何考えてるんだろう…。
先輩の考えてることが分からない…。
「もうさ、告っちゃえば?」
「え?」
「だって好きなんでしょ?
獅堂先輩がなに考えてるか知らないけど、
こっちから告っちゃえば解決じゃん」
解決って…。
「そんな勇気無いよ…」
紙コップに視線を落とし、
ため息をついたその時。
「ずいぶん弱気だね?」
後ろから聞こえてきた声。