君に染まる(前編)


楽しめなかった…というより、
楽しむ気になれなかった。



先輩達に獅堂先輩のことを聞かされてから
そのことばかり考えちゃって…。



結局…昨日も今日も、
獅堂先輩は会いに来なかったし…
本当に飽きられちゃったんだな…。



“好き”って、気付いたのに…
このまま終わっちゃうの?



…なんかバカみたい。



美紅先輩も言ってたじゃん…
あたしと獅堂先輩は
元々釣り合ってなかった…って…。



先輩にはもっとお似合いな人がいる。



きれいで…大人っぽくて…色っぽくて…。



あたしとは正反対の人が。



だから…忘れよう。



短い間だったけど…
あんなかっこいい人に
気に入られたっていう
いい思い出が出来たと思えばいいんだ。



先輩の笑顔も。



先輩の声も。



先輩の手も。



先輩の腕も。



全部いい思い出だと思えばいい。



それだけのことだよ。


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