君に染まる(前編)
状況が理解出来ず、
瞬きをすることが精一杯の瞳からは
さっきよりも涙が溢れだしてきた。
目を閉じていた先輩は
唇を離しながらゆっくりと目を開く。
完全に開いた目は、
「…え?」
そう呟いたと同時に大きくなった。
「え、ちょっ、なんでお前泣いて…え?」
焦りまくりの先輩。
…どうして…どうしてキスするの?
「お、おい!未央!?」
うつむいたあたしの顔を
心配そうに覗きこんでくる。
「どこか痛いのか?」
顔を振った。
「じゃ、じゃあ目にゴミが入ったとか…」
「…なんでですか?」
「え?」
「なんでこんなことするんですか!?」
静かな部屋にあたしの声が響く。
「分かりません!
あたしに飽きたのに呼び出して、
キスなんかして…
先輩の考えてること全然分かりません!」