君に染まる(前編)
言いたかったこと。
聞きたかったこと。
そんなの全部忘れてしゃべり続ける。
「あたしのこと遊びだったなら
もう関わらないでください!
先輩の気分で振り回したり惑わしたり、
あたしは先輩のおもちゃじゃないんです。
もう…こういうことしないでください…」
あたしのすすり泣く声だけが
聞こえる部屋の中で、
1、2分も経たないうちに
聞こえてきたのは
先輩のあっけらかんとした声だった。
「何言ってんだ?お前」
普段叫んだりしないあたしは、
さっきの自分の言動に
いっぱいいっぱいで
頭がうまく回転しなかった。
先輩の言葉を頭に入れるのにも
時間がかかる。
「…え?」
少し間が空いて顔を上げると、
首をかしげる先輩の姿。
「言ってる意味がさっぱり分かんねぇ」
そう言って腕を組んだ先輩に
あたしも首をかしげる。
「誰が誰に飽きたって?」
「…先輩が…あたしに」
あたしの言葉に眉間にしわをよせた。