君に染まる(前編)
慌ててそう言う先輩がちょっと可愛くて
思わず笑ってしまった。
「何笑ってんだよ」
「だって…」
ただでさえ不似合いなのに
先輩がそんなジンクスをするなんて…。
信じてなかったとしても、
無理やりやらされたとしても、
実行したってことがすごいと思う。
…ん?…ちょっと待って?
「あの、文化祭のジンクスって…」
“後夜祭までの5日間、
好きな奴と一言も会話せずに
花火と同時にキスしたら幸せになれる…”
好きな奴と一言も会話をせずに…。
「好きな奴って…」
「あ?」
「それってつまり…」
あたしのこと?
「…あ……だあー…もう!」
あたしの考えてることに気付いたのか、
照れくさそうに頭をがしがしかくと
あたしを抱きしめた。
「俺、よく分かんなくて…」
あたしの肩に顔をうずめる先輩。
「けど、あいつらに何度も言われて、
やっと理解出来た。
ドキドキしたり、会いたかったり、
単純にそういうことだって…」